お神札とくらし

神棚百景-神棚のあるくらし

稲田久子さん

稲田久子さん

2019-3-23

博多区須崎町の稲田商店。趣のある佇まいに誘われます。レジのおかみさんに聞くと奥に神棚があるとのこと。
伊勢神宮のお神札を正面に、左右二つの宮型に守られた氏神・崇敬神社のお神札。立派な神棚です。朔日(ついたち)間近ということで赤飯の準備がしてあります。お米、お塩、お水は毎日お供えし、1日と15日にはお神酒を新しくするのだそう。流しにはお神酒用のお酒が常備されていて、神棚のお手入れが生活の一部となっていることが伺えます。お供えしたものは、お米であれば混ぜて炊き、お塩であれば料理に使用して頂くのだそうです。
戦後日本に戻ってきた先代が始めて、以来70年以上の歴史がある稲田商店。海外生活でもきちっとしていたという親御さんのもと、子どもの頃は「学校から帰ってくるとお手々を洗って口をゆすいで、ただいま帰りましたと神棚にご挨拶して、そしておやつを食べてました」と久子さんは言います。
「今でもうちでは祓詞(はらえことば)※を詠みます。『今日も一日色々とご加護を頂きましてありがとうございました。無事に過ごさせて頂いてありがとうございました。掛けまくも畏き
伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に…』と」。
「そういう風にしているとね良い出会いがある。へぇっていう時にポッと助けられたり。それがお導きっていうかな。神様分からん〜かたちもないけんと友達に言われるけど、いやそんなもんじゃないよと私は言うのよね。そういうものがあるから自分を律して生きていけるのかなぁ」。久子さんは「神さま、ただいま帰りました。今日も一日ありがとうございました。今日はこういうことがありました。こういうものを頂きました。どうぞおあがりください。おかげさまで無事に過ごすことができました」と日々会話するのだといいます。
「わたしね、おかげさまでって言葉が大好きなの。おかげさまって言葉の中に感謝とかいろんなものが含まれてるでしょ」。自分を律し、神さまや人への感謝を忘れない久子さん。80歳を過ぎても一度も入院したことがないという元気の秘訣はその姿勢にあるようです。

※祓詞(はらえことば):神事に先立ち行われるお祓い、修祓(しゅばつ)の時の祝詞。

お神札とくらし

Copyright© 2016 FUKUOKA-KEN JINJACHO FUKUOKA-SHIBU All rights Reserved.