お神札とくらし

神棚百景-神棚のあるくらし

富永たつさん

富永たつさん

2017-7-12

海の中道を抜けて志賀島に入ってすぐ、富永さんのお住まいがあります。周辺の町並みは昔ながらのもので、細い路地が多く民家が密集しています。大人が両手を広げれば、道を挟んだ家と家の壁に手が届く場所もありそうです。海と山に挟まれた地形が手伝って風が通りをよく抜けていきます。
富永さんの神棚は玄関を入ってすぐ奥の壁に見えます。親戚の宮大工さんがこの家を建てた頃に作ってくれたもので、お神さまとお稲荷さまをガラス戸で丁寧にお守りしているかのようです。朝、その日の無事を神棚にお祈りし、夕方、その日の感謝を神棚にお祈りする、それはご両親に教わった小さい頃からの習慣で、「お勤め時代も、どんなに忙しくても、欠かさなかった」とのこと。その他「大的(おおまと)(※1)」の頃には「的菓子(まとがし)(※2)」をまつったり、七夕にはお寿司、おくんち(九州北部の秋祭りの呼び名)にはさわらご飯をあげたりと、季節ごとのお供え物があるといいます。
玄関には「お潮井」という清めの砂がありました。この地域ではよく見かけるもので、外出の際に体や鞄に振りかけて無事を祈るそうです。わたしたち取材チームも、帰路の無事を祈ってお潮井を振り合い、富永さん宅を失礼しました。

※1:歩射祭の俗称。歩射祭は志賀海神社の年頭行事。阿曇百足の土蜘蛛退治伝承にちなむもので、破魔の目的と年占の意味を兼ねた神事。名前は馬に乗らずに弓を射ることに由来する。
※2:笹に一口香(長崎のお菓子)や駄菓子をくくり付けたもの。

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